極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

「阿辺君……だ、大丈夫っ? け、怪我とかしてない……?」

 見た感じは大丈夫そうだけど、どこか擦っているかもしれない。

 一人あたふたとして、手をどうしようもなく動かす。

 阿辺君は少しだけ俯いてから、視線を横にずらしこう口にした。

「……それは湖宮が心配する事じゃねーだろ。」

「へっ?」

「俺の心配、何で湖宮がしてるわけ?って聞いてんの。」

 一言目は、どういう意味なのか分からなかった。

 でも直後の二言目で全てを察した。

 きっと、阿辺君はこう思ってるんだ。

『嘘告したのに、何で助けた?』

 ……って。

 自意識過剰だとは重々承知だけど、私にはそう見えた。

 だから私は、一瞬だけ阿辺君から視線を外す。

 その後に……自分の気持ちを言葉にした。

「怪我しそうな人を無視するなんて、私にはできなかったから……だよ。」

「それでも……湖宮が俺を助ける理由にはならねーはずだ。」

 そこまでで切り、一つ息を吐き出した阿辺君。

 その行動からは、阿辺君の意図はよく見えてこない。