そうすれば気が紛れるかもしれないし、暇潰しにもなるはず。

 椅子から立ち上がり、行く当てもなく教室から出る。

 お昼休憩だという事で、どこに行っても人が多い。

 人気がなさそうなところって、どこだろう……。

 人気が多いところが苦手な私は、辺りをきょろきょろ見回しながら探してみる。

 ……やっぱり、一人だと心細いな。

 なんて思いつつ、歩みを止めないようにとめどなく足を動かす。

 その時……私は一つの教室の前を通った。

 そこはいろいろな用具が置いてある倉庫と化している教室。

 あまり人が来ない事からも、ここの辺りは落ち着く。

 この辺りで時間、潰せるかな……。

 心の中でそう思いながら、興味本位からその教室の中に入ろうとする。

 ……だけど直前で、反射的に足を止めた。

 阿辺君、だ……。

 私の視線の先には、その教室の中で一人ぼんやりと外を見ている阿辺君が。

 阿辺君は私の存在に気付いていない。それが不幸中の幸いというか、何というか。

 ……バレない内に、早く立ち去ろう。