極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

 ……あれ? 氷堂君……?

 視線を上げたと同時に、私の視界に入ったのはいくつかのコーンを持った氷堂君。

 その直後にコーンを用具入れに入れて、はぁーっと息を吐き出す。

 氷堂君、体育委員じゃないのにすごい……。

 完璧な人格な上にボランティア精神まであるなんて、氷堂君ってやっぱり尊敬する。

 だけど私もボールを片付けなきゃいけない事を思い出し、無意識に止めていた足を動かす。

「あれ、湖宮さんどうしたの?」

「……さ、サッカーボール片付けに来たんだ。片付けきれてなかったらしくて……。」

「そっか、ありがとう。」

 びっくりした。

 まさか、氷堂君が私の名前を知っていたなんて……。

 私は地味で目立たない普通の生徒。だから知られているのは、驚くのに等しいものだった。

 ……この学校の王子様である氷堂君になら、余計に。

 でもそれを顔に出すわけにもいかず、愛想笑いを浮かべてサッカーボールを戻す。

「それじゃ、湖宮さん戻ろうか。」

「う、うんっ……。」

 こんなに氷堂君と長い時間話したのは、初めてかもしれない。