極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

 秦斗君の楽しみを、私が台無しにするわけにはいかない。

 眼鏡も外せているんだから、きっとお化け屋敷くらい……大丈夫、だろう。

「お足元に気を付けて、ゴーストたちの屋敷を楽しんできてくださーい!」

 キャストさんに最後そう言われ、握られていないほうの手でぐっと拳を作る。

 そして一瞬だけ目を瞑ってから、意を決して足を踏み入れた。

「わ……真っ暗……。」

「思ってたよりも雰囲気あるね。流石、有名アトラクション。」

 アトラクションの中は何も見えないくらい暗くて、どこに向かって歩いていけばいいのか分からなくなりそう。

 かろうじて所々に照明があるから、まだ大丈夫だけど……気を付けてなきゃ、こけちゃいそうだ。

 神経を尖らせて、ふぅ……と一呼吸置く。

 その時だった。

「ウガァァァ!!!」

 目の前にいきなり、ボロボロの服を着た女の人が現れた。

 その顔は蒼白で、恐怖から変な声を上げてしまう。

「ふひゃぁっ……!?」

「……結衣さん、大丈夫?」

 その声に気付いた秦斗君が、心配を含んだ声で尋ねてくれる。