「それじゃあ……土曜日に俺と一緒に遊園地行かない?」

 その事の発端は、家族のお節介だった。

 親戚がある遊園地のキャストらしく、母さんがチケットを五枚ほど貰ったんだと。

 俺は遊園地はあまり好きではない。嫌いっていうわけでもないけど。

 どちらかというと、水族館とかの静かな場所が俺は好き。

『彼女ちゃんと行ってきなさいよ。ほら、チケット二枚あげるから。』

 母さんには一応、彼女……結衣さんのことを言っている。

 仮、だって事は母さんも知ってるはずだ。

 それでも“彼女”と言ってくれチケットを渡してくれたのは、母さんが俺の気持ちに勘付いているからだろう。

 結衣さんへの気持ちは、紛れもなく本物。それを母さんは悟ったらしい。

 母さんは昔から、少しばかり世話焼きなところがある。

 父さんはそこに惚れたらしいけど、未だ親の惚気に耐性はつきそうにない。

 ……まぁ、最近は父さんの姿なんて見ないけど。

 だけど母さんの気持ちを無下にするわけにも申し訳なくて、ダメ元で誘ってみた。

 結衣さんが遊園地に興味があるか、は問題でない。