「紗千さんも……。」

 嬉しい。そう言ってもらえて。

 そんな事を思うと同時に、ここまで言わせてしまった罪悪感にも駆られる。

 でも今度は、口には出さない。

 余計に心配をかけてしまいそうだし、気を遣わせてしまいそうだったから。

 ……本当に、ここまでしてもらえて感謝しかないよ。

 これなら少しは秦斗君の近くに立っていても、大丈夫そうかな……。

 私自身もいつもの地味な格好じゃダメだと思っていたから、これはこれで結果オーライだ。

「あ、結衣そろそろ行ったほうがいいんじゃない?」

「えっ、もうそんな時間っ……!?」

 紗代ちゃんに教えてもらい、はっと我に返る。

 言われて腕時計を確認すると、確かにもうそろそろ待ち合わせの時間だった。

 早く行かなきゃ……!

「わ、私失礼します! 紗千さん、本当にありがとうございました! 紗代ちゃんも何から何までありがとうっ!」

「ふふっ、結衣楽しんでらっしゃい。」

「行ってらっしゃ~い結衣ちゃん。」

 最後に眼鏡をかけて、手を振って美容室を出る。

 そして急いで、秦斗君との待ち合わせ場所に向かった。