榛名side









ありす。俺が,ほんのちょっぴりだけ過去の,今の俺になったのは,いくつかの分岐を経てからなんだ。

最初は,そう。

可哀想な最期を迎えた母をあんなにも愛していたのに。

父親が突然,ある日家に1つ年下だという女を連れて来た事だった。

初対面だからと,不審に思いながらもにこやかにしていれば。

挙げ句結婚するだなんて切り出して来た。

あの日の激昂を,俺はもう2度と忘れられないんだと思う。

どうして,いやいつから。

そんな父親に失望し,もう信用するだなんて出来なかった。

俺はそんな激情を抱えながら,笑って頷いたんだ。

えらいでしょうありす。

俺がどう思うかなんて,あの父親が分からないはずなかったのに。

それでも打ち明けて,最初から未来なんて決まってるくせして,俺の許可なんてずるいポーズを取ったんだ。

全部全部,あのどうしよもない義母と父親の為さ。

俺はちょっとした人間不審に陥ったよ。

中3の夏辺りだった。

母が奪われて,たったの5年ほどだった。

俺を作ったのは,俺のそうゆう隙だった。