榛名くんの声と,私を掴んだその左手に。
閉じた唇が,震えた。
「座って,ありす」
また,元の位置に誘導される。
年下でも,ちゃんと男の子な榛名くん。
無理矢理に引っ張ることも出来たのに,私のほんの小さな抵抗を見ると,それ以上引きはしなかった。
それでも,話してもくれなくて。
今度は唇から,喉が震える。
だめ,今,振り向いたら……
「ありす,泣いてるの……?」
唇から伝わった喉の震えは,直ぐに音になって。
私の顔が見えない榛名くんの,耳に届いた。
「ち,がうの,これは。何でもなくて,違うの」
どうしてこんなに悲しい気持ちになるの?
分かってる。
ただそれだけ,恥ずかしかっただけだと言うこと。
頑張った,ただ確認がしたかった。
でも,それすらきっと間違いだった。
「どういうことか,話してくれる? 俺の知らないことで,ありすが泣くのは嫌だ」



