甘くて優しい青春恋物語 ~恐怖のドキドキと恋のドキドキは紙一重~

 それと同時に小さく囁かれるように声が聞こえて、反射的にその場に座り込んでしまった。

 な、何今のっ……!?

 今、こっち来てって……でも、後ろには誰も居なくて余計に寒気が走った。

 や、やっぱりもしかして……お、お化けが居るんじゃっ……!

 両耳を手で押さえて、ぎゅっと目を瞑る。

 もう嫌っ……!

 こんなに怖いって分かってたら意地でも来なかったよ……!

 心臓も、とめどなく嫌な音を立てて脈動している。

 その時、私に追い打ちをかけるように肩に誰かの手が乗った。

「安心して、俺が居るから。」

「や……! おばけ、怖いっ……!」

「おばけじゃない。俺、風真だから。」

 ふうま、くん……?

 いつもの風真君の声が聞こえたけど、私に目を開ける余裕なんて残っていない。

 怖くて怖くて、ただ震える事しかできなかった。

 更に目を瞑る力を強めて、首を何度も左右に振る。

 ……その瞬間の事だった。

「空音、前に手伸ばして。」

「む、むりっ……!」

「大丈夫だから。俺を信じてくれるなら、手伸ばして?」