パタン、とさっきまで読んでいた本を閉じ、ぐーっと背筋を伸ばす。

 ふぅ……ちょっと疲れたなぁ……。

 確かに風真君の言う通り、この辺りはたくさん都市伝説があった。

 例えば、【午後五時ぴったりに町はずれの池に行くと、池の中に引きずり込まれる】とか。

 【踏切に桃を置くと、小さな少女の霊が出る】とか。

 他にもたくさんあって、まとめるほうが大変だった。

 こう言うのって普通、探すほうが大変なんじゃないの……?

 なんて、本気で考えたくらいには。

「空音、まとめるのは順調?」

「わっ……! って、風真君びっくりさせないでよ~。」

「ふふ、それはごめんね。」

 ごめんって思わないタイプだ、絶対……。

 とは口には出さず、笑って「いいよ。」と返す。

 その後風真君は私が見ていた資料が気になったらしく、私の隣の椅子を引いて座った。

「これ、たくさん載ってるね。」

「そうなの。この本、何でもこの辺りの都市伝説集らしいんだ。」

「へぇ、そりゃあたくさんあるわけだ。」