狼の目に涙

と言ったは良いものの、制服のままで寝かせるわけにもいかない。
男物の服なんて家にないし、買い出しへ。

こういう時に一人だと融通がきかなくて、でも自分以外の誰かが常に近くにいるのも憂鬱。
面倒くさい奴ってまさに私のこと。

どんな服が好みとか考えることもなく、最初に目に入った上下グレーのLサイズのスウェットを買って、小走りで家に帰った。
また帰ろうと逃げ出されたら困るし。

でもその心配はなかったようで、真っ先に寝室を覗きにいくと、掛け布団を鼻まで被ってスースー寝息を立てていた。
規則的に聞こえる寝息と長いまつ毛、真っ直ぐ高く通った鼻筋。
目が合うと切れ長の目が更に鋭さを増して、目で殺されるという比喩がぴったりだという噂を、知らない誰かとすれ違った時に聞いた覚えがある。