口を閉じたまま大人しくしていると、辿り着いたのは保健室。


『会議中のため不在』の貼り紙を無視して扉を開けた昴は、ベッドへ私を押し倒した。


そして、速攻で掛け布団を押し付けられる。


「本調子じゃないのに歌って踊って、顔だけ男の相手をして。頑張りすぎだ」


顔だけ男って完全に悪口じゃん……。


そう思いつつも、昴からの心配が滲み出たそのセリフに笑いが漏れ出る。


「自分の身体も大事にしろ。俺が困る」

「私がいないと、Sparkは回らないからね」

「そうだけど、そういう意味じゃない」


今日の昴は難しいことばっかり言う。


もっとわかりやすくしてほしい。


アイドルの意図をマネージャーが汲み取るっていうのは、結構技がいることだ。


「学園長には俺が言っとくから、百合は大人しく寝てろ」


片手で目元を覆われる。


暗闇とほどよい温かさに包まれて、意識が底の方へ沈んでいく。


なんだか、安心する心地よさ。


そういえば、曲が終わったあと迷いなく私の名前を呼んでたね。


体調不良も隠してたのにバレちゃったし……昴って意外と鋭いのかも。


そんな気づきを最後に、手に温もりを感じつつ。


私は意識を闇に落とした。