都市夢ーとしむー

暗者と逆神
その1/開封


恐る恐る…。
それはまさに、その白い封筒を手にした日下の正直な思いだった。

”さあ、開封するぞ”

弁護士としては、出来れば見たくない。
しかし、弁護士の職に就く一人の人間としては、何としても直視せねばならない…。

そんな相反する思いを交互させ、日下は封筒の中から便せんを取り出した。

...


≪前略…、日下さんのことは沢井さんからはいつも伺っています。一貫して合同法律事務からの誘いを固辞し、あくまで個人事務所の一弁護士として、市井の人々と共に法と対峙しているあなたの生きざまには敬服をして止みません≫

≪…あの白日夢を手繰り寄せ、若くしてこの世から”消え去った”少女からの依頼ごとには、弁護士として真正面から当たってくれたそうですね。元刑事の沢井さんから伺い、感服いたしました。ありがとう…≫

≪…その彼女と同様の道をたどり、わずか十代半ばでこの世から消えた沢井さんの妹、カスミさんの一部始終をも正視し、現役刑事だった旧知の友の心を慮ったあなたの真摯な生きる姿勢、素晴らしい…。そんなあなたには、ぜひ、直接会って全部をお伝えしたかった…≫

≪でも、今の私の体では出向くことも叶わず、今回、沢井さんがこちらを訪れていただいた機会に、つたない文章で書き綴った手紙を預かってもらいました。ぜひ、ご一読いただいて、沢井さんの同志であり、弁護士である日下さんのお力をお貸しいただけたら幸いです≫

ここまでが浅間ユイからの手紙の冒頭部分だった。