都市夢ーとしむー

その9/相棒の叫び



「いや、お前に聞かせないでいられるか!恐ろしく危険な共同戦線を共にしてくれてるんだ。…その封筒の中身に記されている浅間さんの論建てが全くの的外れでなけりゃあ、”あの日”、S署で熱く訴えてた彼女を社会の安寧に身命を賭すことで飯食ってる警察組織が門前払いって…。人間の命を表面上でしか守らないと言ってるのと同じだよ」

「…」

おそらく日下は耳を塞ぎたい気分であっただろう。
まさに、”人間の作った法”で”人間”を照らすことを根底としている現役の弁護士には、絶対に受け入れられない論なのだから…。

...


「それは百歩譲って、法がすべてを僕としているならいい。だが、リカ‥、ああ、浅間さんは”逆神(サカガミ)”と呼称しているが、そいつは完全、人間社会の法の枠外だ。そんな野郎が人間社会に手を突っ込んで生身の人間の命や社会的地位に影響を与えるんであればだ、そいつの存在をきっぱり否定できなければ、人間が作りった法に則って人間を罰したり、罪のある無しを決する警察や弁護士は、その土台を失って正義を執行してることになる」

「!!!」

「いいか、日下・・・。そやつがだ、この俺達の生きてる人間界に自分の姿を保つために、潜在意識の中の契約で若い女のエキスを貪るまでは許容したとしよう。だがだ、暗者の能力を持ち得る浅間さんの見立てでは、若い女を見染め、人間をやめさせようとしてるんだ。その狙いは明らかさ。自分の意を”元人間”に代行させることだ。そいつが人間を超えた能力で罪を犯すことを許したらどうなる!」

「…」

日下には答えられなかった。

...


「法の下で裁くには、現実に即した証拠が絶対不可欠だろーが。それを消せちゃう能力を逆神によって与えられた、人間を辞めた姉ちゃんが殺しとかの犯罪三昧に陥ったら、この世は闇だ。法の下で罪と罰を導く弁護士として無視できるかどうか、そこの視点で、その手紙を読んでくれ。なあ、相棒…」

「わかったよ、相棒…」

そう言って視線を交わし合った二人の頭には、同じ思いがよぎっていた。

”もう後戻りできない…”と。