その8/忍び寄る不安



その後、イズミは”そのこと”を慎也に告げた。
そのまんまで…。

「…おい、イズミ!そん時の遭遇場所、関越道の群馬県内だったんだな?」

「ええ‥。群馬県のPAよ。間違いない。それがどうしたの、慎也?」

「おい…、今までは都内S区だろう、とりあえず。まあ、お前の勤務先がS区なのはいいが、”それ”が同じ人物だとしたら、東京を離れて群馬に現れてるってことだろ?」

「ああー、そうか!その妖しい女、特定の場所や土地にではなく、特定してるのは人ってこと…」

イズミは後段、恐る恐るの口ぶりになって、愛する彼氏に振った。

...


「そう言うことになるよな。理屈では…。その場合、イズミは確かにJリードレンの女子社員ではあるが、くっついてきた女の根拠は果たして本陣坂通りにあるJの勤務する清田イズミなのか、原アユムとは同期で親しい仲の彼女が媒体なのか‥」

「ちょっと、慎也…。どっちにしても、私、その実在するかしなか、この世の者かどうかもわかんない得体のしれない女に、取り憑かれちゃったってこと?」

「…取り憑かれてるって言うより、マークされてるとか見染められたとか…、要はアユムに起った状況下にお前もって可能性は低くないってことか…」

「慎也!!」

彼にはこういうところがあった。
昔から…、いや、元来からと言うべきか。

”でも、悪気は決してない。気を回した言い回しよりも、素直に相手へ伝えずにいられないという誠実さゆえんなんだよ。そんなのわかってるって!でも…、それでも、あなたが言う通りだとしたら私…。怖いよ…、慎也!”

彼女は、彼の体をこれでもかというくらい抱きしめていた。