「昼休み、CDありがとな」

「全然、まだ全曲流せてないんだけど…」

「結構曲数あったからな」



並んで歩く廊下。

グラウンドからは野球部の掛け声が聞こえる。



緊張で会話が続かない。



「あのCDの曲の歌詞、結構良いんだよ」

階段を降りて下駄箱に着いた時、有島くんがそう言った。

「そうなんだ。…聴いてみよう、かな?」

「聴いてみて。そんで感想聞かせて!」

「わかった」

「…じゃあ、俺行くわ」

小走りで下駄箱を出て行った有島くんを、見送った。






「あれが例のCDの持ち主?」

「わっ」

突然耳元で声がして驚いて勢いよく振り返ると、そこには名波先輩が居た。

「ぶっ。髪を振り回すな」

私の髪が目に入ったのか口に入ったのか、文句を言われ反射的に「ご、ごめんなさい」と謝った。


「名波先輩、どこからいたの」

「最初からここに居たけど。面白いもん見れたわ」



楽しそうに笑う名波先輩。


放送室以外で話すのは、初めてだ。



通りすがる生徒にすごく見られる。

何の接点もないはずの名波先輩と私が喋っていたら、そりゃ不思議かもしれない。



「名波バイバーイ」

3人組の女子生徒が私の背後から大きな声でそう言って手を振った。

「おー」




私は何となく気まずくて、女子生徒たちに顔を見られないように背中を向けた。