「マナを知られてしまったんだ。俺の機嫌は損ねないほうがいい、だろう」
 背筋にぞくりとくる艶めいた声で言って、彼は長い指でアリッサの顎をすくう。
 美麗すぎる顔面が近づいてくる。
「なに、そう難しい要求をしているわけじゃない。アリッサはただ、永遠に俺のそばにいればいいんだ」
 鼻先がぶつかり、アリッサの肩がびくりと跳ねる。
「リ、リシャールさま。今は昼です。朝でも晩でもありませんが」
「あぁ。覚えておいて。俺が朝だと思えば朝だし、夜と言えば夜だから」
「そ、そんなっ」
「――もう黙っていろ」
 唇が重なる。アリッサの心は幸福に包まれ、大波のように感情があふれ出す。彼女の額のアメジストは、それはそれは美しく、光り輝いた。