アリッサは真剣に考え込み、ブツブツとひとり言をつぶやく。
「たしかに、うれしくてドキドキして感情が膨れあがったけど……制御はできていなかったし……流出量より生み出される量が多かったってこと?」
「心配ないよ、アリッサ」
 リシャールはにっこりと笑み、彼女の肩に手をかける。
「キスが関係あるのかどうか、確かめてみればいいだけのこと」
「え、えぇ!?」
「今日から朝と晩に必ずキスをしよう。それで、君の聖石の色に変化があるのか、祈りにどう影響しているか、実験してみればいい。データ数は多いほうがいいから、最低でも一年は続けたいところだな」
(リシャールさまともう一度キス!? ありえないわ)
 自分の感情がどうなってしまうのか、恐ろしい。
「で、ですが……」
 尻込みするアリッサの後頭部に手を回し、リシャールは逃すまいとする。
「うれしくてドキドキしたんだろう? 君が嫌でないのなら、この実験を中止する理由はない」
「リ、リシャールさま?」
「それに、君は俺に弱みを握られてしまったことを忘れてるな」
 彼の瞳が嗜虐的に輝いた。