「それは絶対に認められないから、諦めてくれ」
「え?」
「アリッサは俺の妻。俺はたとえ死んでも、君を手放す気はない」
「ですが――」
「この議論は時間の無駄だよ。放さないと言ったら、放さないからな」
(リ、リシャールさまが私ごときに執着している!)
 なんとも不思議なことだが、事実のようだ。仕方なくアリッサは彼に事情を打ち明けることにした。
 人にマナを教えるのはタブーだが、やむを得ないだろう。
「リシャールさま。私がこれから話すこと、絶対に秘密にしてくださいますか?」
 なぜか、彼はどこかうれしそうにニヤリとする。
「アリッサと俺だけの秘密ということか……悪くないな」