「だが俺もまだまだくたばるわけにはいかない。やり返させてもらおう。そして――俺に負けたら一葉の言葉を叶えてやる、というのは?」

にこりとする白桜に、黒藤はひっくと頬を引きつらせた。

この騒動の一端に関わってしまっている黒藤だが、白桜がそう来るとは考えていなかった。

ぶっ飛ばされる覚悟はしていたけど。

『……ふん。そう言っておれるのも今のうちだ。我らは手加減はせぬ』

そう吐き捨て、交渉役だった烏天狗は高く飛翔した。

『一葉よ、さらばだ』

「おい――」

声を飛ばしたのは黒藤だった。

『今しばらく、待て』

言い残して、白桜は去っていく双葉の烏天狗をにらみつけるだけ。

「……え、と……」

そして戸惑っているのも黒藤だった。

「は、白……?」

「俺の誘いを受けたということだろう。今の返事は」

白桜の挑戦を受けた一言だった。

白桜は刀を一振りして、姿を消させる。

「天音、またしばらくは百合姫を頼む。こちらは無炎についてもらう」

「……承知いたしました」

「うん、頼むよ。華樹、牡丹にも今の事は伝えておいてくれ。双葉が受けたのは俺との勝負だ。お前たちに害悪はいかせない」

「……は」

天音も華樹も不承不承といった顔だ。

それに気づいた黒藤が口を出そうとするが――

「心配ない」

先に、白桜が二人に振り向いた。

「今しばらく待て、ということは、一葉とともにある道を望んでいるということだ。あの調子だから簡単に――手を抜いてはこないだろうけど、俺の使役にくだることに頑として意を唱えもしなかった。俺が相手になったことでみんなには心配をかけてしまうけど……大丈夫だ。俺だぞ?」

その、根拠というには乏しすぎる説明だったが、白桜をそばで見てきた天音と華樹には説得力があった。

白桜ならば大丈夫、という。

二人の表情から力が抜ける。