月華の陰陽師2-白桜の花嫁-【完】


「お前らの中に犯人はいない、と」

『ああ』

「なら、犯人を知っているか?」

『如何ようにも答えられぬ』

「……。戻っていいぞ」

腕を軽く上へはらうと、烏は羽ばたいて次の瞬間には姿を消した。

窓辺に背を預けて腕を組む。

答えられない、か……しかも『如何様にも』ってことは、烏は答えを持っているってことだろう。

否とも是とも、知っているが答えられない。

「黒」

「うん?」

呼ばれた方を向くと、白桜が黒藤を見ていた。

「白!」

「うん、飛びつかなくていいから」

「あー」

顔面に白桜の校内履きの裏を喰らってしまった。

白桜に飛びつこうとしたら蹴りの恰好で足を突き出された。

「痛い……顔にあざついちゃう……」

「だったら変態行動やめてくれよ」

「変態控えたら俺じゃないだろ」

「なんでだろう。否定できないことが哀しい……」

白桜が哀愁を漂わせてしまった。

「んで? どしたん?」

「いや、今なんか知らない気配がしたから……」

白桜が黒藤の隣に立って窓辺に背をもたれさせる。

「ああ、俺の使役。ちょっと訊きたいことあったから呼んだんだ」

「お前使役どんだけいるんだよ」

「んー? 出先でシメた奴は大体、かな……?」

「お前行動範囲広いな」

「白ほどじゃないよ」

「俺はじい様について歩いただけだ。お前みたいに一人で歩いてみたいとも思うよ」

「俺がどこへなりとも案内するよ?」

とか黒藤がいつも通りたわごとを言えば、白桜からは――

「いいかもな」