いつもの教室でいつものメンバーでいつものように一日が終わる。明日の卒業式以降、司と琴乃が隣に居ないなんて本当に実感がわかない。
 
「明日で……最後の三人一緒か」

一人で帰る帰り道、沈んでいく夕陽を眺めながら、なんだか涙が出そうになった私は、慌てて早足で家に帰ると、出来るだけ元気よく、いつものように母に「ただいま」を告げ自室の扉を閉めた。

そして私は感傷に浸るように本棚から久しぶりにアルバムを取り出した。分厚いアルバムには5歳からの写真が現在までズラリと時系列に沿って並んでいる。

「ふふっ……三人ともちっちゃいな」

幼稚園の参観日で親が撮影してくれたものだ。頬に絆創膏をつけている5歳の司と、仲良く手を繋いでそれぞれお気に入りのぬいぐるみを抱っこしている琴乃と私が写っている。

「ほんと、どの写真も三人一緒だな」

小学校、中学校、高校といつも私の隣には琴乃が、私の隣のとなりには司が写っている。

どんどんページを捲っていった私は去年の夏祭りの写真のところでふと捲る手を止めた。Tシャツにジーンズ姿の司と浴衣姿の琴乃。そしてリンゴ飴片手にお気に入りのワンピースをきた私がこちらに向かってピースサインを掲げている。ただこの時三人で撮った、この写真だけは、私の表情はどことなく寂しげに見える。

「……とうとう最後まで言えなかったな」

夏休みに入ってすぐに司から呼び出された私は、司が琴乃の事がずっと好きだったことを知った。そして司は琴乃に告白しようと思っていること、もし自分が琴乃にフラれたら今までの自分達の関係が壊れることを危惧していることも包み隠さず話してくれた。

そこで私は琴乃と二人きりの時にさりげなく司のことを聞いてみたところ、お互い両想いなのが分かり、私のお膳立てで二人は見事に交際を始めたのだった。

「司嬉しそうだな……」

まだ交際を始めたばかりの二人から夏祭りは今まで通り三人で行きたいと言われてついて行ったが、司は琴乃の浴衣姿に顔を真っ赤にしていて琴乃を見ようともしないことに気づいた私はリンゴ飴に見立てて、あえて司を揶揄ったことを思い出す。

「はぁ……この気持ちもどうにか明日で卒業しないとな……」

アルバムを仕舞い、ふと何気なくスマホで『誰も傷つかない告白の仕方』を検索してみる。

しばらくその検索画面を眺めていた私は、手持ちで一番可愛い便箋を引き出しから取り出しペンを握った。