「執事のジェフさんが様子を見に行きました」

 彼がそう教えてくれたタイミングで、執事役のジェフが隣家の方から戻ってきた。

「警察が踏み込んだようです。なんでも、殺人があったとか。それから、もろもろの告発があったようです」

 ジェフはノーラを気にしつつ、教えてくれた。

 彼女は、いまのところ一言も口をきいていない。だけど、先天的に喋ることが出来ないとか、きくことが出来ないというわけではないはず。

 環境要因により、言葉を失っているのかもしれない。

 いまもジェフの言葉は理解出来ている。その証拠に、きれいなルビー色の瞳が大きく見開かれた。わたしは、それを見逃さなかった。同色の長い髪は、昨夜汚れはとったけれど、いまだにほつれたりからまったりしたままである。

 彼女をこっそり観察しつつ、少し前に書斎でコリンとバーナードが話をしていた内容を思い出した。