「ノーラ、わたしも行くわね。なにかあったら、隣がわたしの部屋だから遠慮なく起こしてね。入ってきて、ぶん殴ってくれればいいわ。それでも起きるかどうかは神のみぞ知る、だけど」

 冗談を言ったつもりだった。

 彼女は、眉間に皺をよせている。

 もしかして、面白くなかった?

 彼女、笑い話の基準が厳しいのかしらね?

「じゃあ、おやすみ」

 立ち上がると、扉の方へ歩こうとしてバランスを崩してしまった。

 とっさに長椅子の背をつかもうとしたけれど、つかみそこねた。

 その瞬間、なにかに支えられた。

 ハッと横を見ると、ノーラが体全体でわたしを受け止めてくれている。

「あ、ありがとう、ノーラ。助かったわ。気をつけなきゃ、よね?」

 彼女は、部屋の外までわたしを支え続けてくれた。