「おや? 見た顔だな……。ああ、オルコット男爵の姪か? 兄貴の使いでオルコット男爵家に行ったときに、オルコットが『姪を娼館にでも売り飛ばし、返済の足しにしてくれ』と言ったが、実物を見て売り物どころかこっちの方が引き取り賃を要望されそうだから断ったんだ。だから、そいつの顔をよく覚えている」

 な、な、な、なんですって?

 わたしは売り物にならないわけ? それどころか、引き取り賃が必要?

 ああ、しまった。そこ、ではないわよね。

 あのろくでもない叔父が、わたしを娼館に売り飛ばそうとしたですって?

 見てくれがこんなだからセーフだったけど、これが美しかったらアウトだったわ。

 見てくれがこんなんでよかった。

 って、納得している場合ではないわよね。