なんと、男爵の顔がそのままなのである。

 ふつうの死者の(それ)とは比較出来ないほど潰され、喉が裂けたままの状態なのである。

 ふつうは体裁を整える。人は、どんな死に方でもたいていは死に化粧が必要になる。

 きっと体裁を整える費用を惜しんだのね。

 なんてドケチなのかしら。

 とりあえず座るところを探したけれど、こんな状態の屋敷に腰かけることの出来る椅子があるわけがない。とくにここは、エントランスだし。

 クレイグがエントランスの端に連れて行ってくれたので、壁にもたれることにした。

 もたれようとして、壁になにやら気味の悪いドロドロしたものが付着していることに気がついた。