「誠にお恥ずかしい話です。法を司る要職に在りながら、まさか姪や姪孫(てっそん)が暴力にさらされていたとは……」
「家庭内のことは、わかりにくいものです。たとえ身内であっても、外部から様子を知るのは難しいと思います」

 額の汗を拭きつつ恐縮する法務大臣に、そう告げるしかない。

 ほんとうのことである。

 暴力を受ける者は、自分の中で片付けたりため込み、だれかに相談をすることはめったにない。だから、わかりにくいのである。

「それよりも、フランクにケガはなかったですか?」
「はい。これも公爵夫人のお蔭です」

 伯爵夫人の答えに、心からホッとした。