「くそっ! 可愛げのないレディだ」
「閣下。どうか言葉にお気をつけ下さい。公爵ともあろうお方が、『くそ』だなどと仰るものではありませんわ」

 そう忠告してあげたときには、廊下に出ていた。

「こいつは面白い」
「大人ってほんとくだらない」

 廊下を厨房へと向かってすたすた歩くわたしの背に、義父役のクレイグと子ども役のヘンリーの嘲笑があたって砕けた。

 第何代目かのアッシュフィールド公爵家の歴史の一頁は、たったいまから刻まれるのである。

 もっとも、偽りだらけでいつ終わってもおかしくないけれど。