「きみも虐待されていたんだな?」

 両肩に手を置いたまま、彼が顔をのぞきこんできた。

「ここに帰ってきてから、クレアにきみを診てもらった。彼女の様子がおかしかったから、問い詰めたんだ。きみの背中には、その、今日以外の古い虐待の跡があると……」

 彼の夏の空みたいな青い瞳は、いまは翳りを帯びている。それは室内の淡い灯火による陰影ではない。

「申告する必要があった?」

 なぜかそんなかわいげのない言葉が口からでていた。