コリンらしくない。演技と現実がわからなくなっているの?

 それとも、もしかして下手な言い訳をしてでも慰めてくれようというの?

 そのとき書斎の扉が控えめにノックされた。

「旦那様、ノーラお嬢様のドレスが届きました」

 ヒラリーの可愛らしい声がそう告げた。

「ミヨ。おれが言いたいのは、きみはもう自由だ。何者にも縛られない。ましてや、ろくでなしの叔父一家などに人生をめちゃくちゃにされるなんてこともな。きみは、おれには到底考えられないほどがんばったんだ。もう充分だろう? だから、なにも気にする必要はない。これからは、アッシュフィールド公爵夫人として、気ままにすごせばいい。それ以上も以下もない。いいな?」
「だけど、コリン。それは……」

 どういう理論なの?

 偽りなのに、どうしろっていうの?

 偽りなのに、許されるっていうの?