「おいおい、勘違いするなよ。これは、あくまでも演技だ。おれたちは役者だ。夫婦、それから家族を完璧に演じなければならない。だから、人前ではきみをちゃんとエスコートするし、それっぽい愛情表現もするだろう。だが、当然ながらそこに愛などない。完璧に夫婦や家族を演じきり、任務をこなすんだ。多額の謝礼を受け取る為にね。きみもそこのところはわきまえてくれよ」

 ムカつく。シンプルにムカつきすぎる。

 これが、わたしの夫役であるコリン・キャンベルとの初対面にして初の会話だった。

 違ったわね。初のムカつく忠告だった。

 この日、わたしたちは夫婦になった。そして、義理の父と彼の子どもも得た。さらには、執事と料理人と三人のメイドと一匹の猫も得た。