その週の金曜日。
四時間目の授業が終わると、わたしはお弁当箱の入ったミニトートを持って、誰よりも早く教室の外に飛び出した。
カノンやアキナに止められる前にとわき目もふらずに速足で歩き、中庭へと続く校舎の角を曲がる。
ドキドキしながら桜の木の陰からそっと中庭の花壇を覗いたけれど、そこに新海くんの姿はない。
一緒に昼休みを過ごすようになってから、新海くんが中庭での待ち合わせに遅れたことは一度もない。
なるべく教室にいたくないのか、新海くんは昼休みになるとすぐに教室から出て行ってしまうから。
必ずわたしよりも先に中庭についていて、花壇のレンガに座って待っていてくれるのだ。
でも、今日はわたしが教室を飛び出すのがあまりに早すぎたのかもしれない。
わたしは桜の木のそばを離れると、花壇のレンガに腰かけた。
いつもはここに来れば新海くんが笑顔で迎え入れてくれていたから、ひとりきりで待つのはなんだか心細い。