田宮陽葵(たみや ひまり)。中学2年生。あと4年の命。というのも病気が、原因ではなく、自分は大人になる前に死ぬと決意したからである。成人年齢が引き上げられ、2年も寿命が縮まった。まぁ、決して生きたい訳では無いが、死ぬのは少し勇気がいるというか、怖さを感じてしまう。小1の時からそうだった。私には友達はいない。担任にいじめられてから悪口しか耳に入ってこなくなり、その時から友達も仲間も消えた。精神的にもだいぶ鬱を超えているのが自分でもわかる。体の調子も全然悪い。高熱を出す時もあるが、父親にも先生にもクラスメイトにも気を使わせたくないので無理やり来る毎日が続いた。
生きる概念がない私と裏腹に、生き生きと満ち溢れている男がいた。イケメンでサッカー上手いらしいけど、死ぬ覚悟がある私には全く興味のない事だった。だって、今更モテても、死んじゃうんだから、本人が可哀想やろ?ま、質素な私がもてることは無い、嫌われるだけなのは知っているが、今更仲良くすることもない。
今日もいつものように高熱。39.2℃、、、。まぁでもいつもの事。フラフラするし、ぼーっとするし、顔も赤いけど、誰も私の事気にする人はいない。咳も出るが、ま、飴を隠しとけばどうにか乗り越えられる。嫌われずに済む、そう思った。
いつものように学校についてから、宿題をした。なぜなら家では宿題をできる状態ではない。暴言暴力の時間である。休む暇もない。今日は高熱である上、一睡もしていない。非常に乗り越えられるか心配だが、みんなに迷惑かけないように我慢するしかなかった。
そういえば噂の男とは同じクラス。ま、席はそいつの後ろ。1番後ろの端っこの席で、ほんとによかった。窓側で、大人しく一日を過ごせる、、、というのは大違い。そう名前は、染川琉那(そめかわ りゅな)。染川くんは、忘れ物が多い。それにサッカーは出来て、イケメンでも、頭はダメらしい。よく宿題を、写しにくる。
「やっほー、ひまりさん。今日も写させてもらうよ。」
ノリはいい。
「なんで写しに来るの、、」
「えー、だってひまりさん、学年トップの頭やん。それにさ、めちゃくちゃ分かりやすいんだよね、ひまりさんの宿題。」
これがいつもの朝の会話。
でも、今日は宿題をちゃっちゃと終わらし、今日1日寝ないために寝てしまっていた。染川くんが来ていると知らず、ずっと寝ていた時の事だった。
「また寝てるのか、、借りちゃうよー。」
何も言わなくても勝手に写される。いつもはこの時体調悪くても何も言われなかった。しかし、この男は見てはいけないものを見たのだ。