後ろから大きな掌が伸びてきて、私の手首が掴み上げられると共に男の怒鳴り声が降ってきた。

見上げれば蒼い髪を靡かせた男が切長の瞳を細めてこちらを睨み落としている。

「……何、よ、離してっ」

「離すかよっ!それ以上行ったら溺れんだろうが!こいっ!」

男の剣幕に思わず体がビクンと跳ねた。

見れば確かに背の低い、私の体はいつの間にか胸まで海に浸かっている。男に手首を掴まれたまま、ジャバジャバと海の中を引き摺られるようにしながら砂浜へ着くと、一気に海水を吸って体が重たく感じる。

着ていた水色ワンピースの裾を雑巾絞りしながら、下着のラインがみえていることに気づいた私は咄嗟にしゃがみ込んだ。

「これ着て」

男は自分が黒のTシャツの上に羽織っていた白い長袖のシャツを私の肩に掛けた。

「……ありがと」

長身の男は太ももまで濡れたデニムを乾かすように私の隣に足を投げ出した。

「なんで?」

「え?」

唐突に聞かれた質問が何のことかわからない私は答えられない。