夜になり、さくらは隣のベッドの北斗に話し始める。

「北斗さん、私ね、今普段の記憶も戻ってるの」

えっ!と、北斗が驚いてさくらを見る。

「じゃあ、もう全て思い出したってこと?今は何も記憶を失くしてないの?」
「そう。この花びらのおかげで、北斗さんのことも覚えてるし」

そう言って、左の小指を顔の上にかざして見る。

そこには、絆創膏で桜の花びらが留められていた。

「だからね、私、一度東京に戻るね。この花びらは、絶対に外さない。そうすれば、北斗さんのことも忘れないから」
「さくら…。でも、それが本当にさくらにとっていいことなのか?さくらは、東京にいれば安全に暮らせるんだ。でもここでの記憶があれば、またいつか…」

さくらは、じろっと北斗を睨む。

「北斗さん。今、北斗さんが怪我してなければ、私、あなたのお腹にパンチしてる」

えっ?!と、北斗がひるむ。

「これから私がどうするかは、私が決める。私が幸せかどうかも、私しか判断出来ない。私は、自分で自分の生き方を考える。たとえ北斗さんに何を言われても、私は自分の考えを曲げたりしないから」

真剣にそう言ったあと、じゃあお休みなさいと微笑んで、さくらは目を閉じた。