サイレンを鳴らしながら、救急車は一本道を走って行く。

さくらはひたすら北斗の身体に手を添えて、力を注ぎ続けていた。

「北斗さん、しっかり!」

声をかけながら、さくらは心の中で呟く。

(大丈夫、私はまだあなたのことを覚えている。忘れたくない。このまま北斗さんを、私は北斗さんのことを、ずっとずっと…)

「お願い、しっかりして北斗さん!」

しばらくすると、モニターの音が正常になり、北斗の容態は安定してきた。

「君、一体…」

救急隊員がさくらに小さく呟いた時、救急車はようやく病院に着いた。

北斗を乗せたストレッチャーは、救急入り口からすぐさま中に運び込まれる。

救急車から降りたさくらは、それを見届けると、そのまま意識を失って倒れた。