やがて、サイレンの音と共に救急車が到着した。

救急隊員が、急いで北斗を取り囲む。

「離れてください」

さくらは、ようやく北斗から手を離した。

その途端、ふらっと身体が後ろに倒れる。

「さくらちゃん!」

祖父が慌てて抱き留めた。

「おじいさん、北斗さんは?大丈夫?」
「ああ。今、救急車の中に運ばれた。出血も止まったよ。さくらちゃんのおかげじゃ」
「良かった…」

さくらの目から、涙が一筋こぼれた時だった。

「うわっ!」

救急隊員が叫び声を上げる。

「止血!急げ!」

さくらと祖父が目を向けると、ストレッチャーに乗せられた北斗の腹部から、新たな血が流れ始めていた。

北斗の身体に付けられたモニターのアラーム音が鳴り始める。

「北斗さん…」

さくらは立ち上がると、救急車に乗り込み、北斗の腹部に手を置いた。

「君、離れて!」

救急隊員がさくらの肩を掴む。

「だめじゃ!その子を引き離してはならん!」

祖父が威厳のある声でそう言うと、その場にいた隊員達が一瞬ひるむ。

「さくらちゃん、いいのか?ここから離れたら君は…」

祖父が、心配そうに声をかけてきた。

さくらは、北斗に力を送りながら、祖父の目を見据える。

「私、このまま北斗さんに付き添います。たとえ私の記憶が失くなっても、私が北斗さんを助けます」

祖父は、ギュッと眉根を寄せてから顔を上げた。

「北斗を頼む、さくらちゃん」
「はい」

さくらは祖父を見て、しっかりと頷いた。