「あ、もしもしお母さん?」

夜、ワンルームマンションに帰ってきたさくらは、実家の母に電話をかける。

「おばあちゃん、具合どう?私、明日から連休だから、様子見に行こうと思って」
「あ、それがねー。お母さんも昨日から行くつもりだったんだけど、おばあちゃんが、大丈夫だから来なくていいって」
「え、でも、足まだ治ってないんでしょ?」

冷蔵庫からペットボトルのミネラルウォーターを取り出して、ベッドに腰掛ける。

「そのはずよ。だって、足痛めたのは3日前で、その時お医者さんに、全治2週間くらいって言われたらしいからね」
「じゃあ、まだまだかかるよね。私、やっぱり行ってくるよ」

すると母は、うーん…と思案する。

「おばあちゃんに釘刺されたのよ。さくらに言うなって。心配して、様子見に行くなんて言い出したら悪いから、黙っててよって」
「もう、おばあちゃんたら。そんな気を遣わなくてもいいのに…」
「まあね。でも年取ると、周りに迷惑かけるのが何より堪えるみたいよ」

さくらは、んー…と考えてから、そっか、分かった!と、わざと明るく言った。