屋敷に戻ると、祖父が待っていた。

北斗が1人で車から降りてくると、全てを察したように小さく頷いてみせた。

屋敷は、さくらが火事にすぐ気づいてくれたおかげで、2階の書斎とその隣の部屋を焼かれただけで済んだ。

桜の木も無事だった。

やはりこの火事は、会社の金を横領した社員による放火で、すぐに警察に逮捕され捜査が始まった。

そして不思議なことが1つ…

林の中から、さくらの物と思われるリュックが見つかったのだ。

以前確認した場所にも関わらず、まるで神隠しのように、さくらを病院に連れて行った次の日に見つかった。

外ポケットに学生証が入っており、見てみると、大学名の下に、高山 さくら 18歳と書かれていた。

北斗は、そのリュックを持って再び病院に向かった。

そっと病室を覗くと、窓際のベッドに半分起き上がったさくらが、そばの椅子に座る女性の背中をさすっている。

「もう、そんなに泣かないで。ね?おばあちゃん。私、こんなに元気なんだから」

笑顔のさくらを見て、北斗はホッとする。

そして病室のドアの横にリュックを置いて、立ち去った。

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