さくらの記憶

「さくらちゃん、何してるの?」

ある夜、縁側に座って外を見ていたさくらに、北斗が声をかけた。

「あ、北斗さん」

さくらが顔を上げて、にっこり微笑む。
北斗もさくらに笑いかけると、隣に座った。

「あの桜の木、本当に見事ですよね。神秘的で、美しくて……。私、ずっと見とれてしまいます」

そう言うさくらこそ、月明かりに照らされて美しく、神秘的だと北斗は思った。

北斗は、じっとさくらの横顔を見つめながら、考える。

(俺は、彼女に出会うべくして出会ったのだろうか?ただの偶然ではない。きっと、ずっと遥か昔から、俺は彼女と繋がっていたんだ)

夜の静けさの中、暗闇に浮かび上がる桜の木に目をやる。

「ねえ、さくらちゃん」
「はい」

二人で静かな会話をする。

「ここにいて、寂しくない?」
「いいえ。不思議なくらい、私はここにいると安心するんです」
「でも、怖くないの?記憶もないし、これからどうなるのかって」
「そうですね……。私の心の中は今、何が起きても負けないって気持ちで一杯です」

北斗は驚いて目を見張る。

「さくらちゃん、そんなふうに思ってたの?」
「ふふ、本当ですよね。私、こんな性格だったのかなー?もっと、か弱い女の子かと思ってたのに」
「いや、か弱くはないと思うけど……」
「ええ?!それ、どういう意味ですか?」

さくらは、ぷうと頬を膨らませる。

「あはは!ほっぺが膨らんだ。怒ってる証拠」
「もう!北斗さん?!」