さくらの記憶

同じ頃。
北斗もまた、頭を悩ませていた。

父の残した会社を継いでまだ数ヶ月。
だが北斗は、何かがおかしいと感じていた。

小さな会社ゆえ、従業員もごく数人で、皆、父の顔見知りや友人という、なんとも内輪な雰囲気だった。

様々な書類のずさんさや簡略化が目についていたが、それにしても収支がおかしい。

もしかして横領……?と、考えたくないことまで思い浮かぶようになり、1度きちんとデータや書類を見直し、会計士と弁護士に相談しようかと思っていた。

小さな事務所で、データを保存したり資料をコピーしていると、ふと、背中に視線を感じることがある。

誰かが自分の行動を見張っている……

そう思うと、ますます北斗は、己の疑念を深くしていった。