「待て、さくら!」
「いや!来ないで!」

バタバタと慌ただしく玄関に入ってきた二人に、祖父は驚いて顔を覗かせる。

「ど、どうしたんじゃ?北斗」

階段を駆け上がり、部屋に入ると中からガチャリと鍵を掛けたさくらにため息をついて、北斗は祖父を振り返った。

「さくらが…どうやら思い出したらしい」
「え?じゃあ、木に触れたのか?」
「いや、触れてない。ただ、風で花びらが一気に舞ったんだ。さくらはそれを浴びて…」

なるほど、と祖父は頷く。

「それで?なんでさくらちゃんはお前から逃げとるんじゃ?」

はあ、と北斗は大きく息を吐く。

「気づいたんだよ、俺の思惑に。また病院に連れて行かれるって…」
「そういうことか。きっと5年前の別れを覚えとるんじゃろうな」

北斗はもう一度ため息をつくと、階段を上がった。