屋敷の隣にある大きな林。
そこを少し入った所に大樹があり、さくらはその木に手を当てながら立っていた。

その光景を見た時、北斗は信じられないと目を疑った。

なぜなら、今までその木のそばに人がいるのを、見たことがなかったからだ。

いや、正確に言うと、自分の家族と、たった1度だけ見かけた小さな女の子。

それ以外の人を、その木のそばで見たことはなかった。

声をかけることも出来ずに見守っていると、何かを察したのか、祖父も屋敷から出て来た。

「こ、これは一体…」

そう言って、ただ呆然と北斗と並んで見入る。

さくらは両手を伸ばして木に触れ、じっと目を閉じている。

やがて、ふわっと風が舞い上がり、さくらの長い髪と木の枝が揺れた。

花びらがひらひらと舞い落ちる。

だがおかしなことに、風はそこにしか吹いていない。

(この子は…木と会話をしている?それとも木からエネルギーをもらっているのか…)

そんな不思議な感覚を覚えながら見つめていると、徐々に風が収まり、ふっとさくらが目を開けた。

ゆっくりとこちらを振り返り、北斗達を見てハッと息を呑む。