「おい、おじい!タオルを、早く!」

玄関に入るなり、北斗は奥のリビングに向かって叫ぶ。

「なにごとじゃ?やっぱり何か…」

そう言いながら玄関に現れた祖父は、北斗が玄関に座らせた女性を見て目を見開く。

「も、もしかして…」

北斗はそんな祖父に、真剣な表情で頷いてみせた。

「やはりそうか。でもなぜ…」
「いいから、早くタオルを!」

祖父の思考を遮るように北斗が言った。

「大丈夫か?どこか怪我は?」

バスタオルで身体を包みながら北斗が声をかけると、さくらは首を横に振る。

「そうか。だがこのままだと風邪を引く。おじい、風呂沸いてるか?」
「ああ。さっき沸かしたところじゃ」
「良かった。じゃあ、ゆっくり身体を温めるといい」

そう言って肩を抱き、立たせようとすると、さくらは、あの…と不安げに顔を上げた。

「ん?どうした」
「あの…。私は、どうしたんでしょうか?なぜあそこに…。それに、ここはどこですか?」

北斗は思わず祖父と顔を見合せる。

「あ…、その。とにかくまずは、ゆっくり風呂に浸かるといい。話はそれからにしよう」

やや強引にさくらを立たせると、北斗はバスルームに連れて行った。