その日、さくらは産まれたばかりの赤ちゃんも一緒に家族4人並んで眠り、懐かしい夢を見た。

まだ幼い頃の自分が、あの木の下で泣いている。

『どうしたの?』

聞こえてきた声に、おばあちゃんがいないの、と泣きながら答えた。

『大丈夫よ。今、お兄さんを呼ぶからね』

やがてやって来た小学生の北斗が、どうしたの?と声をかけてくれる。

「おばあちゃんが、いなくなっちゃった」
「そっか。じゃあ一緒にさがそう。おいで」

北斗は小さなさくらの手を繋いで、屋敷の下の道まで連れて行く。

「さくらー、どこにいるのー?」
「あ!おばあちゃん!」

さくらは、北斗の手を離すと祖母に駆け寄った。

「ああ、さくら!良かった。どこにいたの?探したのよ」
「うん、あのね。あっちにいきたくなって、木のところにいったの。そしたら、おばあちゃんがみえなくなって。ないてたら、あのおにいちゃんがつれてきてくれて…あれ?」

振り返ったさくらは、既に姿を消した北斗を探す。

「おにいちゃん、もういっちゃった。ありがとうって、いえなかった…」

ぽつりと呟く幼いさくら。

(大丈夫。必ずまた会えるからね)

さくらは、小さなさくらに囁いた。

(あなた達は、千年前から繋がっているの。だから必ずまた巡り会える。そしてずっと一緒にいられるわ。千年先も、ずっとずっと…)

(完)