愛が芽生える刻 ~リラの花のおまじない~

ソフィアが取り乱すところを初めてみたエルマーは
何もできずに茫然としていた。
ソフィアが押し付けたものを地面から拾い上げて、
中身を確認したエルマーは絶句した。

(こ、これは・・・)
懺悔とともにエルマーの記憶から消し去っていた苦い思い出が蘇る。
ソフィアが持っていたのは1枚の写真だった。
その写真には女とがっつりキスを交わすマスカレードの日のエルマーが写っていた。

「最悪だ・・・」
自室に戻ったエルマーは、
とりあえずシャワーを浴びてベットに寝転がる。
なんでこれがソフィアの手元にあるんだという疑問はさておき、
これは言い逃れできない。
あの日の記憶をエルマーは必死に手繰り寄せる。
前半はユリウスに気を配りつつ、
その場の雰囲気に合わせて楽しく踊っていた。
後半に入ってダンスも飽きたので、
食べたり飲んだりしていたと思う。
そしたら自分と同じ年ぐらいの女の子2人組が話しかけて来て・・・
だめだ、それ以降は思い出せない。
会場を出てどこかのパブに入った気がするが。

写真を凝視していたエルマーは
自分とキスしている女に見覚えがあることに気づいた。
最近、やたらと自分に絡んでくるカーレンベルク侯爵令嬢だ。
首筋にある2つのホクロも彼女と全く同じ位置にある。
ということは、この写真は侯爵令嬢がわざと撮らせたのだろう。
(嵌められたーーー)