明らかに落ち込んだ様子で働くソフィアに
ユリアーネはニンマリしていた。
ユリアーネの実家カーレンベルク侯爵家は
最近勢力を増している一門だった。

カーレンベルク侯爵の妹がウィステリアに嫁いでおり、
妹に会うために侯爵自身もウィステリアを訪れる中で
マグノリアにはない様々な発明品に出会った。
それらに衝撃を受けると同時に商機を見出した侯爵は、
早速、マグノリアで貿易会社を起ち上げる。
戦争や資金不足を理由に事業はなかなか好転しなかったが、
ウィステリアと友好条約が締結されたことで
自由な貿易が行えるようになったカーレンベルク侯爵の企業は
株価が急騰し、
一族は莫大な富を得ることとなったのである。

その恩恵を受けているのがユリアーネだ。
今までは侯爵令嬢といっても地味で目立たない存在だったが、
父の事業が拡大するにつれて周囲からチヤホヤされるようになった。
今まで見向きもしなかった貴族の令息たちから夜会で声がかかったりもする。
もっともっとみんなから称賛されたい、注目を浴びたい。
いつしかユリアーネにそんな感情が湧きおこるようになった。