「このままだと、本当にエルマー様を失ってしまうわ。それは嫌でしょう?」
ハンナの問いかけにエミリアは頷いた。
「女の方が積極的にならないと駄目な時ってあるのよ。私もそうだった。」
ハンナが悪戯っぽく笑う。

「私の旦那って、真面目で全く面白みがない男なのよ。女性を喜ばす術を全く知らないの。甘い言葉なんか言われたこと無いし、デートで手も繋いでくれない。」
「旦那さんのどこが良かったの?」
「彼はサプライズとかそういうのは苦手なんだけど、感情の起伏がなくていつも穏やかなの。彼の前に遊び人の男と付き合ってひどい目にあったから、余計に惹かれたのかな。私の愚痴や悩みなんかを嫌な顔一つせず辛抱強く聞いてくれてね、あぁ結婚するならこういう人なんだなって。」
王妃付きの侍女として働き始めた時、ハンナは既に既婚者だったので
ハンナの恋愛については聞いたことがなかったので新鮮だった。
「でもねー私がいくら結婚したいアピールしても、全然プロポーズしてくれないの!匂わすだけじゃダメだって分かったから、結婚しないなら別れるって本人に迫っちゃった。」

マグノリアでは女性から男性にプロポーズすることは基本的にない。
恋愛面でいまだ保守的なマグノリアでは、
そういった固定観念がまだ根強く残っているのだ。
いかにも優等生という感じのハンナが、自分から迫ったというのは
意外な事実だ。