「私が言いたいことは分かるわよね?」
ユリアーネの甲高い声が中庭に響き渡る。
「エルマー様につきまとうのはやめてくださる?次はないですわよ。」

一方的にまくしたてると、
ユリアーネは踵を返して城に戻って行った。
取り巻きの一人が
無言のまま立ち尽くすソフィアの胸に
例の写真を押し付ける。

地面に落ちた写真をそっと拾い上げて
悲しい気持ちになる。
エルマーにとったら自分は一時の戯れだったのか。
自分が知るエルマーはそんな人ではないと思っているのに、
この写真を見てしまったら
その自信は粉々に砕けてしまった。
ソフィアはその写真をポケットにしまうと、
気を紛らすかのように
自分に与えられた仕事に没頭した。

その日から、
ソフィアは夜の時間に出歩くのをやめた。
エルマーと顔を合わせるのが怖くなったのだ。
毎日の仕事もエルマーと鉢合わせしないように
仕事を選ぶようになった。

そんなソフィアの変化にただ1人気づいたのが
ハンナだった。
ある日の仕事終わりに
「お茶でも飲まない?」とソフィアを誘う。
ソフィアはもともとあまり喋らない子だったが、
決して陰気臭い子ではない。
聞き役に徹して、
ニコニコしながら静かに話を聞いてくれるタイプだ。