「……次は、ねえから」
急に声のトーンを低くしてそう言い捨てた真紘くんに負けて、舌打ちをして去っていくのがわかった。
今のはきっと、先輩達以外は聞こえてないぐらいの音量。
「真紘くん……ありが、」
「来て」
お礼を言おうと思ったのに、遮られて手を引かれる。
……どこ行くの?
そんな私を気にせず無言で廊下を進んでいく真紘くん。
なんだか機嫌が悪そう……?
そのまま階段までたどり着いたと思うと、降りるわけではなく逆に上がっていく真紘くん。
え、四階に行くの……?
「ま、真紘くん……?」
「……」
話しかけても無言で。
そのまま四階まで上がって、連れてこられたのは誰も使わないような空き教室。
いつもの様にドアを閉められ、危険を察する。
な、なんでこんなとこに……。
そう思っていると、いつの間にか真紘くんの香りに包まれていて。
抱きしめられているということを理解するまでにそう時間はかからなかった。

